いまい動物病院
【獣医師が解説】犬の避妊手術−適切な時期・メリット・リスク

メス犬って避妊手術をした方がいいの?
このトピックは、みなさんが、犬を迎えた時に悩むことの一つかもしれません。今まで犬を飼ったことがなければ、尚更でしょう。
飼い主さんが避妊手術のメリット・デメリットをしっかりと理解した上で、手術を検討しなければなりません。そこで、今回は検討しているみなさんに向けて、犬の避妊手術に関して徹底的に解説していきたいと思います。
〜犬の避妊手術〜適切な時期・メリット・リスク・費用・など徹底解説!

避妊手術の適切な時期(タイミング)はいつ?
子犬を避妊手術を行う場合は、生後半年から9ヶ月(初めての発情が来る前)までに行うのがベストです。
その理由には
・乳腺腫瘍という高齢になった時に罹患する女の子の病気の1つの発生率が初回発情前に避妊手術を行うと著しく低下すると言われています。
(乳腺腫瘍は犬の腫瘍の中でも発生率が高く、その乳腺腫瘍の半分は悪性になると言われています)
・年齢が若いほど、手術に伴う出血量も少なく、麻酔後の回復も圧倒的に早いです。
このような理由から、初回発情前に手術を行うことをおすすめしています。初回発情は早い子だと6ヶ月ほどで来ることがありますので、生後半年を迎えたら、避妊手術をしてあげてください。
〜飼い始めた時に子犬じゃなかったうちの子は?〜
乳腺腫瘍に関してですが、避妊手術を初回発情後にした場合は乳腺腫瘍の罹患率が約8%、2回目では約25%と高くなっていきます。さらには、子宮や卵巣も大きくなり、出血量も増え、麻酔の回復も遅くなりますので、出来るだけ早い手術をしてあげてください。
避妊手術のメリットは?
乳腺腫瘍を防ぐ意外に、
・子宮蓄膿症という高齢になった時に罹患する女の子の病気の1つの発生を防ぐことが出来る(子宮蓄膿症は、子宮に膿が溜まってしまい、命に関わる病気)
・ホルモンに関する病気(糖尿病や、免疫力低下など)の予防
・発情に伴う皮膚炎の悪化の予防
・発情に伴うストレスの軽減
・望まない妊娠を防ぐことができる
と様々な観点から、有益な側面があります。
避妊手術のリスク・デメリットは?
・太りやすくなる(ホルモンと代謝の変化により、肥満になりやすいため、食餌には大変気をつけなければなりません)
・全身麻酔によるリスク(どんな手術でもそうですが、100%安全な麻酔はありません)
そのため、事前に獣医による検査・チェックをし、リスクを出来るだけ最低限にします。
〜どんな検査・チェックをするの?〜
まずは前日夜にご飯を食べさせてないかをお聞きします(麻酔前の食餌は逆流の危険がある)そして、身体検査(問診・触診・聴診・視診)をします。さらには血液検査やX線検査です。腎臓や肝臓など内臓に問題がないかを血液検査によりチェックします。X線により体の内部に異常(腫瘍など)がないかをチェックします。この術前検査がものすごく大事になります。
避妊手術の方法は?
【術前準備】
麻酔前に薬を投与します(手術における不安や緊張を除く薬・筋肉を弛緩させる薬・術中や術後のための鎮痛薬)
麻酔導入薬(意識を無くすための薬)
気管チューブを挿入
吸入麻酔(麻酔を維持するために気管チューブを通して、吸入麻酔と酸素を送り込みます)
心電図・血中酸素測定器・血圧・呼吸・体温などを測定
手術する部位(お腹)の周辺の毛をしっかりと刈ります(毛によって感染するのを予防します)
毛を刈ったお腹を入念に消毒液にて消毒します
手術を行う執刀医や助手は滅菌されたガウン・帽子・マスク・手袋を装着します
滅菌されたドレープで術野以外を覆う(感染防止・清潔にするために)
【手術】
へそから下にかけて皮膚をメスで切開します。丁寧に開腹を行うと、卵巣と子宮を摘出し、体に自然と吸収される糸を使って血管を結紮します。その後、同様に吸収される糸で腹膜、筋膜、皮下組織を縫合します。最後に、溶けない糸を使い皮膚を縫合します。
【術後】
手術が終了したら、維持麻酔を切ります。その後5−10分後酸素を切ります。麻酔が徐々に切れてきますので、しっかりと観察しながら、体をバスタオルや保温器を使って温めてあげます(麻酔後は低体温になりやすいため)
覚醒後、心拍数・呼吸数・体温・血圧などを細かに確認しながら、術後管理をします
この一連の流れで一番重要になってくるのは最後の術後管理です。最後まで気を抜かず、動物の管理を終えてこそ、避妊手術の成功と言えます。
傷口を舐めないためにも、エリザベスカラーを付けてあげて、退院となります。
病院によっては日帰り・1泊入院するところ様々です。
約1週間後に皮膚に縫合した溶けない糸を抜糸を行い、完了です。
避妊手術の費用は?
当院では犬の避妊手術は5キロまで¥25,000 プラス、5キロごとに¥5,000です(血液検査代別途)
ここまで犬の避妊手術を徹底的に解説してきましたが、大事なところは、かかりつけの動物病院でしっかりと相談することです。小さな体に麻酔をかけて、メスを入れるのですから、分からないことや納得いかないことなど獣医師としっかりと話しあい、信頼関係を作っておくことが大切です。みなさんの大事な大事な家族が手術をするんですから、容易には決定せず、メリット・リスク・デメリットをしっかり理解した上で避妊手術を行ってあげてください。
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